研究概要 |
本研究は,小学校児童の経済認識(見方・考え方)のプロセスの解明とそれに即した授業実践のための根拠となる認識の発達に関する基礎的データを収集する事を目的とする。本年度は,児童の経済認識の発達の様相,発達を規定する要因の抽出,発達と規定要因との関連を検討した。取り上げた発達規定要因は,経験要因(生活経験),能力要因(視点取得能力)である。調査結果より児童期の経済認識の発達には,以下の4つの段階が見出された。第1段階:具体的事物・事象に限定した見方をする(1年生頃),第2段階:第1段階よりは視点の拡がりがみられるが,依然として事物・事象の量・大きさの視点に限定されている(2・3年生頃),第3段階:事物・事象の意味や価値,事象間の関係に関する視点から考える(4・5年生頃),第4段階:第3段階より視点の偏りが少ない(6年生頃)。生活経験と経済認識の発達には,経験の量と質に関連が見られた。児童の経済活動にかかわる生活経験は3年生頃より豊富になるとともに,他律的経験にくらべ自律的経験の豊富な児童ほど経済認識レベルが高いことが明らかになった。児童の認知的視点取得能力には以下の4段階が見出された。第1:自他の意識が未分化な段階(1年生頃),第2:自他の違いの意識化が始まる段階(2・3年生頃),第3:他者の行動の意図を推測するようになり,他者の視点を自分の視点に取り込みながら自分の視点そのものも変えていく段階(4・5年生頃),第4:他者の視点を自分の視点の中に積極的に取り込みながら,自分の視点をより望ましいものに作り変えていく段階(6年生頃)。このような視点取得能力の発達と経済認識のレベルには強い関係が見られ,特に3年生頃は視点取得経験が経済認識を促進することが明らかになった。
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