研究概要 |
今年度の主目的はボイテルスバッハ会議における開かれた政治教育の3原則をめぐる議論の分析,60年代から90年代にかけて公表されているドイツの政治教育関係文献の収集・整理,ガーゲル教授,グラメス教授などに研究方法・内容に関するレビューを受けることであった。 ボイテルスバッハ会議における議論に関しては,80年代後半から「制圧禁止」「論叢導入」「関心考慮」という3原則について,特に極右暴力問題などを取り扱う際における不十分な点や限界点が指摘されてきていることが判明した。関係文献のうち書籍・論文,授業計画・記録については,入手可能なものは収集がおわり,整理・分析に着手している。教科書は,各州ごとの認可済み教科書リストにもとづき,収集すべきものを検討中である。研究方法・内容に関するレビューについては,平成11年1月18日から30日までの間に受けることができた。その際,「実用主義的転換」には,「価値多元主義」と「生徒中心主義」の他に,授業研究において授業実践に即した研究重視という側面もあること, 「実用主義的転換」の背景には,教育界における政治的対立克服努力の他に,教育行政によって政治授業の重要性が低く見積もられたという事態もあることが指摘された。 次年度は,典型的な「実用主義的転換」が見られると思われるシュミーデラー,ズートルの政治教育論と,特定の政治教育論の影響を強く受けていることが予想されるヘッセン,ノルトライン・ヴェストファーレン,ラインラント・プファルツ各州の学習指導要領を中心に,収集した文献を, 「価値多元主義」および「生徒中心主義」の有無・程度,その背景にある認識論・知識論,発達論について検討し,ドイツ政治教育学界における「実用主義的転換」の諸相を明らかにする予定である。
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