研究概要 |
本年度は、当初の研究計画に基づいて,下記の3つに関する研究を行った。 1. オーストリアの数学教育研究者Dorflerが提唱する一般化モデル(以下,Dorflerモデル)の特徴と課題を検討した。Dorflerモデルは,一般化の過程を形成するキーステージを明確にしている点ではきわめて示唆的であるが,一般化を推進する認知過程を明らかにしているわけではない。そこで,数学教育における従来のメタ認知概念を拡張しながら,「拡張されたメタ認知」を新たに提起し,Dorflerモデルの補完を行った。なお,「拡張されたメタ認知」に関する研究成果は、「メタ認知は教授-学習の成因か成果かー数学教育におけるメタ認知概念の拡張に関する考察-」と題する論文として報告している。 2. 中学校数学科教師の協力のもと,一般化の過程を組み込んだ課題学習「Star Patterns」を実践し分析した。この課題学習は,wittmannの「教授単元(Teaching Unit)」の理論と,「拡張されたメタ認知」によって補完されたDorflerモデルに基づいて開発されたものである。なお,この研究成果は1998年7月に南アフリカで開催された第22回PME国際学会において,「Design and Evaluation on Teaching Unit:Focusing on the Process of Generalization」と題する論文として報告している。 3. 「小数でわるわり算」と「分数でわるわり算」(以下,「÷分数」)の立式に関する達成度の相違に着目しながら,その要因をDorflerモデルによって解明した。また,「÷分数」の指導方法の改善案を提起し,その授業実践を分析した。なお,この研究成果は,日本数学教育学会・第31回数学教育論文発表会において,「Dorflerの一般化に基づく「÷分数」の設計と評価」と題する論文として報告している。
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