本研究で得られた知見。前年度の研究はhigher-order Markov chainの下でのorder kの幾何分布を条件付き確率母関数により厳密な形式で求めることであった。本研究はhigher-order Markov chainの下でのorder kの二項分布をexactに求めるというものであったが、本研究においても条件付き母関数法は依然として有効であることがわかった。特に、higher-order Markov chainの下において、長さkの成功連の数の分布を厳密に求めるのは困難であることが予想されるが、条件付き母関数法を使用して、その分布の確率母関数を漸化式の形式で導出することができた。さらに、求めた確率母関数の漸化式において、試行数についての母関数を考えることにより二重母関数の形式で厳密に導出することができた。この二重母関数からorder kの確率分布やそのモーメントなどは数式処理言語を使って計算機上で導出することができる。副産物として、higher-order Markov chainの下における通常の二項分布の二重母関数とorder kの二項分布の二重母関数との関係が明確になり、前年度のorder kの幾何分布の場合と併せて通常の離散分布とorder kの離散分布との関係が確率母関数や二重母関数を通じて明確になった。 今後のこの研究の展開。order kの離散分布を厳密に求める上で一番困難であったorder kの二項分布を二重母関数の形式で導出したことによりinverse samplingと呼ばれる通常の二項分布と負の二項分布の関係式をorder kの離散分布の枠組みで考えられる可能性がでてきた。そこで、今後の研究の展開は昨年度の研究で求められたhigher-order Markov chainの下におけるorder kの幾何分布からorder kの負の二項分布の確率母関数を導出して、その分布の二重母関数を求める。さらに、本年度の研究により得られたorder kの二項分布の二重母関数とを対応させることによって、higher-order Markov chainの下でのorder kの離散分布という枠組みでinverse samplingの関係式を考察することが期待される。
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