研究概要 |
画像修復に対する確率モデルであるマルコフ確率場モデルに対するハイパーパラメータの決定法として研究代表者はこれまで拘束条件付最適化の立場で定式化を行ってきた.この立場は統計力学における絶対零度の定式化に対応し,事前情報に沿った原画像に対しては非常に有効な結果が得られる一方で,柔軟性に欠けるという欠点がある.本研究では,ベイズ統計においてマルコフ確率場モデルのハイパーパラメータの代表的推定手法である最尤推定法を研究代表者の提案した拘束条件付最適化の立場で再定式化し,絶対零度におけるパラメータ推定を有限温度に自然な形で拡張することが可能になることを示した.すなわち,拘束条件付最適化の立場における修復画像に対する拘束条件をベイズ統計における事前確率分布に対する拘束条件と読みかえることにより,それが実は最尤推定とまったく同じ結果を与えることを示すことができた.これにより原画像に対する事前情報として「原画像はある拘束条件を満たす事前確率分布の高い確率を与える画像のひとつである」という柔軟性のある仮定を採用したことを意味し,モデルの巨視的パラメータの推定におけるソフトコンピューティング理論の基礎的枠組みを構築することができた.更に,ベイズ統計における最大事後確率推定を最大事後周辺確率推定に拡張し,マルコフ確率場モデルに対する平均場近似にもとづき有限温度の画像処理に対する統計的信頼性評価を行いことにより有限温度における画像修復の意味付けと有効性の検証を行った.その副産物として統計力学におけるスピングラスの基本的モデルの厳密な解析において現れる西森温度との関係も明らかにすることができた.本補助金により購入したグラフィックスワークステーションにより,有限温度のハイパーパラメータ推定および画像処理において多数のデータに対して数値実験を即時的に画像表示を行いながら実行することが可能になった。
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