本研究では、3次元データであるボリュームのリアルタイム可視化を可能とする並列アルゴリズムの研究を行なった。具体的には、平成10年度に設計した適応分割による負荷バランスを考慮した並列シェア・ワープアルゴリズムを並列計算機に実装し、その性能を評価した。性能評価の結果、本並列アルゴリズムは、並列計算機の処理要素であるプロセッサ数に比例した性能向上が得ることがわかった。また、適応分割を導入することにより、並列処理を行なうプロセッサ間の負荷分散が実現されると同時に、並列アルゴリズムに内在する通信量が減少し、その結果、並列処理効率が改善されることがわかった。そして、32台のプロセッサからなる並列計算機により、256×256画素の画像を1秒間に10枚以上生成できることを確認した。また、本研究では、ボリュームデータとポリゴンデータが混在したシーンに対する写実的画像生成を実現するために、大域照明モデルに基づく画像生成法であるレイトレーシング法とラジオシティ法の改良と、その並列化を行なった。具体的には、光線のボリューム内伝搬におけるエネルギー授受モデルをラジオシティとレイトレーシングの照明モデルと統合化し、さらに、統合化したモデルをオブジェクト空間分割型並列処理モデルに基づいて並列化した。本改良並列アルゴリズムにより、ポリゴンで実現される物体と雲や霧などが混在するシーンに対する大域照明モデルでの写実的画像生成が高速に実現できる。
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