研究概要 |
本年度は,「多重解像度幾何制約と許容範囲を用いた局所曲面の変分制御のモデルの構築」について研究を進めた.従来手法では,解像度の違いに関係なく制約を与え,その制約を満たす一番適当な解像度を選択していたのに対し,その解像度毎に異なる制約を付加して,形状の大局・局所的な起伏を意識した形状設計を可能にしたことが,本手法の特筆すべき点である.特に本年度の成果として, 1. ウェーブレットを用いた多重解像度表現に対し,多重解像度制約満たす形状を効率的に求めるモデルを作成したこと. 2. 解像度レベル毎の重み付けを可能にし,同じ多重解像度制約から滑らかさの異なる形状を生成するモデルを構築したこと. 3. 幾何制約を整数解像度レベルだけでなく、その間の実数解像度レベルにも付加できるように拡張したこと. 4. 幾何形状,パラメータ空間,実数解像度レベルに許容範囲を導入し,柔軟な形状制御を可能にしたこと. の4点が挙げられる.これらの成果は,本研究費で購入したCGワークステーション上に,既にシステムが実装されており,多重解像度制約が効率よく形状を制御できることが実証されている. 現在この多重解像度制約のモデルは,多面体表現の一種である細分割曲面の設計へと拡張されていて,パラメータ表現の曲面とは違う興味深い結果が既に得られている.また,多面体表現はデータ量が膨大になるため,従来の変分手法が計算量の観点で馴染まない点もあり,信号処理などで用いられる局所的平滑化手法を応用することも課題の一つである.さらに,これらの多面体表現の初期位相を決定するための,階層モース理論を用いた位相形状設計は来年度の課題であり,あわせて地形標高データの解析への応用も検討する予定である.
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