研究概要 |
本年度、理論面および応用面の両面から当該テーマに関する研究を行った。まず、理論面ではd次元ユークリッド空間上の二つの点集合P,Qの最大共通部分集合を計算する問題の定式化を行い、その計算量の解析を行った。共通部分を定義するためには、Pの2点とQの2点がマッチできるかどうかを定義する必要があるが、その際に2点間のユークリッド距離の差(誤差)が2点間の距離の定数倍(e倍)以内であれば良いという定義を与えることにした。この定義は「近い点どうしの誤差は小さく」、「遠い点どうしは誤差は多少大きくて良い」という自然な定義となっている。この定義のもとて計算論的考察を行い、最大共通部分集合を見つける問題が1次元の時には多項式時間で解け、2次元以上では計算困難(NP困難)となることを証明した。この結果は既存のアルゴリズムなどにおいて同種の問題をグラフのクリーク探索などに変換して解いていることにある種の正当性を与えるものとなっている。 実用面では、以前から開発していたDNA2次元電気泳動画像解析システムDDGELのインターネット版を開発し、そのα版を公開した。このシステムには上記の1次元の場合のアルゴリズムを2次元に拡張したアルゴリズムが用いられている。もちろん、その場合には解の最適性の保証がなくなるが、歪みの少ない場合のヒューリスティックとしては十分実用に耐えうるものとなっている。 今後は、理論面からは2次元以上の場合の近似アルゴリズムの検討、応用面からDDGELシステムの改良と(DNAだけでなく)タンパク質2次元電気泳動画像への対応の検討を行う予定である。
|