本課題において、2次元空間上の点集合を主対象に、非線形の歪みに対応可能な幾何図形のマッチング・アルゴリズム問題について、理論面および応用面の両面から研究行った。 平成10年度に、「近い点どうしの誤差は小さく」、「遠い点どうしは誤差は多少大きくて良い」という要請を満たすように非線形の歪みのあるマッチング問題の形式的定義を与え、2次元以上の場合にはこの問題が計算困難(NP困難)であることを証明したが、本年度ではこの定義や証明の詳細を具体化し、論文発表(発表論文1)を行った。また、平成10年度では1次元では多項式時間で解けるとしていたが、詳細を検討することにより不十分な点が見つかり、点の順序が保存されるという条件が必要なことがわかった。1次元で順序が保存されない場合の検討と、近似アルゴリズムの開発が今後の課題として残されている。 実用的な側面からは、平成l0年度に開発したDNA2次元電気泳動画像解析システムDDGELのインターネット版のシステムおよびマッチングアルゴリズムの改良を行った。DDGELのα版は現在、http://bonsai.ims.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/ddtop/cgi-bin/index.cgiで公開している。また、最近関心が広がりつつある「DNAマイクロアレイ」という実験装置より得られる画像を解析するためのDDCHlPシステムの開発にも着手し、そのプロトタイプを開発した。このDDCHlPシステムでは、DDGELのユーザインタフェース部などを再利用し、開発の効率化を図っている。
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