研究概要 |
初年度の目標であるオブジェクト空間分割型並列計算モデルに基づく並列マルチパスレンダリング法の実装の一部を構築した.光の伝搬問題を計算する代表的なアルゴリズムとしては,光を光線として離散化するレイトレーシング法と,熱の放射問題としてとらえるラジオシティ法の2つがある.これらのアルゴリズムについては本研究者がオブジェクト空間分割型並列計算モデルに基づく並列化により,統一して効率良く並列計算可能であることをシミュレーションにより確認していた.今年度はこのアルゴリズムの一部を分散メモリ型の並列計算機である,IBM社製のSP2上に一部実装した.実装に際してはオブジェクト空間分割型並列計算モデルに忠実な並列化を行うことに配慮した.その結果,32台のSP2において,並列化レイトレーシング法,並列化ラジオシティ法共に50%近くの効率で動作させることが可能であることを示した.その際,負荷分散の方式として,或るタスクの発生が一極に集中するような場合であってもそのタスクの消費が空間に広く渡っている場合には,タスクの消費側近くの計算要素によって計算するという手法を適用して効率を上げる手法を新たに提案した. レイトレーシング法・ラジオシティ法は物体が平面の要素から構成されていると仮定しているが,今後はこの仮定を置かない光の伝搬問題を解くアルゴリズムに対してもオブジェクト空間分割型並列計算モデルを適用し,光の伝搬問題全体を統一して扱うモデルについて研究を進めていく.余力があるようであれば更に,これらの研究を他の物理的計算分野(流体・構造計算の分野)に対して適用可能かどうかを検討していく.
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