マルチスレッドプロセッサにおける複数マシン命令列制御機構を利用して、大規模かつアグレッシブな投機実行を行う、新たな高性能プロセッサアーキテクチャの設計を行った。本年度に得られた具体的な成果は以下の通りである。 1. 大規模投機実行可能マルチスレッドプロセッサの方式設計 逐次プログラムから、マシン命令列の投機実行をも考慮して粗粒度の並列性を抽出し、それらをスレッドとして並列に実行するマルチスレッドプロセッサの方式設計と、そのための予備評価を行った。マシン命令の投機実行方式については、(1)分岐予測確率に基づいて単一パス投機実行とマルチパス投機実行とを柔軟に切り替える多重レベル分岐予測・投機実行方式、(2)分岐に起因して投機実行中のスレッド間のデータ依存関係を早期に解消する多重データ値予測・投機実行方式と、(3)これらの投機実行開始ポイントの動的先見方式、を新たに開発した。特に、(2)については、データの種類ごとにデータ値予測やアドレス予測の各方式とその予測成功確率を詳細に評価・検討し、方式設計に反映させた。 2. 大規模投機実行用データキャッシュの方式・論理設計 マルチパス投機実行によって生成されるデータの多重環境を効率良く管理するための(1)スレッド管理方式、(2)データキャッシュ構成方式、および、マシン命令の並列実行時における(3)割り込みの処理方式を新たに検討・開発した。さらに、(2)については、ハードウェア規模と動作速度(性能)の観点からの実現性を検証することを目的として、当初の予定通り、本研究の方式に基づくキャッシュ制御ユニットの論理設計に着手した。
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