マルチスレッドプロセッサにおける複数マシン命令列制御機構を利用して、大規模かつアグレッシブな投機実行を行う、新たな高性能プロセッサアーキテクチャの設計および評価を行った。本年度に得られた具体的な成果は以下の通りである。 1.大規模投機実行可能マルチスレッドプロセッサの詳細設計 逐次プログラムから、マシン命令列の投機実行をも考慮して粗粒度の並列性を抽出し、それらをスレッドとして並列に実行するマルチスレッドプロセッサの方式および実装に関する詳細設計を行った。昨年度の検討結果に基づき、データ構造を従来よりも抽象度の高いレベルで解釈する新たな機構を開発し、これによって、投機実行の成功率を向上させることができた。シミュレーションによる評価により、マルチメディア分野を含む非数値計算分野のプログラムでの有効性を確認した。 2.大規模投機実行用データキャッシュの論理設計 マルチパス投機実行によって生成されるデータの多重環境を効率良く管理するため、(1)スレッド管理方式、(2)データキャッシュ構成方式、および、マシン命令の並列実行時における(3)割り込みの処理方式を昨年度に検討したが、本年度はこれを実現するためのキャッシュ制御ユニットの論理設計を行った。CADツールを用いたタイミング解析の結果、従来方式のキャッシュ制御ユニットに比べて大きなクリティカルパスの増加を伴うことなく、本方式が実現可能であることを確認した。
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