研究概要 |
共有記憶型および分散記憶型の並列計算機モデルの能力を決定する要因が何であるのか,また,最も能力を発揮する結合網の形状がどのようなものであるのかを調べることを目的として研究を行った.平成10年度は以下のような成果を得た. 1. メッシュ結合網(分散記憶型)およびメッシュバス結合網(共有記憶型)において,通信幅や直径,通信リンク数,キューサイズなどの属性パラメータを考えて,それぞれのパラメータ値における行列積演算,ソーティング,ラウティングの計算時間の比較を行い,回路とシステム(軽井沢)ワークショップにおいて発表を行った. 2. メッシュバス計算機上での計算処理においては,確率の使用が有効であることが予備実験により判った.その実験をもとに,メッシュバス計算機上での高速なランダムアルゴリズムを示すことに成功した.本結果をCOCOON98で発表した. 3. N台のプロセッサからなるメッシュ結合網上での無情報ラウティングに関して,最悪の場合Ω(N)時間が必要であると強く予想されていたが,ヨーロッパアルゴリズム会議(ESA98)において,2次元メッシュ結合網上ではO(N^<0.75>)時間でラウティングできること,3次元の場合はO(N^<0.84>)時間で十分であることを示した. 4. さらに,離散アルゴリズムシンポジウム(SODA99)において,2次元メッシュ結合網上では最適なO(N^<0.5>)時間でラウティング可能であることを発表した. 本年度は,主に,低次元のメッシュ網を対象にモデルの能力を調べてきた.しかし,例えば,無情報ラウティングに対して2次元メッシュ結合網上では最適なアルゴリズムが存在するのに対して,3次元メッシュ上でのラウティングにはより大きな時間を必要としており,不明な点も残っている.この点については平成11年度の課題としたい.また,より自由な結合網に対する考察も必要と思われる.
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