本研究では、主に確率的なアルゴリズムを用いることによって、これまで手に負えないとされてきた問題に対する新たな知見を得ることを目的とした。今年度は以下のような二つの方向からアプローチした。 1. 問題そのものを確率的なアプローチで作成した場合、その問題がどの程度の難しさとなるか 2. 問題を限定された形で考察した場合に、その問題の難しさがどのように変化するか 前者についての結果は以下の通り。手に負えない問題の代表とも言える「充足可能性問題」の問題の例題を確率的に作成するアルゴリズムを考察した。特に、解を一つしか持たないような例題を作成するためには、どのくらいのサイズの問題を生成することが必要であるのかを考察した。そして具体的にいくつかアルゴリズムについて、理論的な上界と下界、および実験的な結果を示した。 後者についての結果は以下の通り。まず、特殊な構造を持つ弦(chordal)グラフを「弦を持たない閉路の長さ」という観点から一般化した。これによって、一般のグラフがこの観点に関して分類できるようになった。この分類された各グループの中で、グラフ上の問題を考察した。そしていくつかの問題について、この分類によって難しさがなめらかに変化することを示した。特に与えられたグラフがどのグループに所属するか、というごく基本的な問題について興味深い結果を得た。具体的には、そのグラフの「弦を持たない閉路の長さ」が定数の時には、並列計算で高速に計算することができるが、それがグラフの大きさに近い場合には、手に負えない問題になることを示した。
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