研究概要 |
人間がテクスチャ画像を見るとき,「とげとげした」「ばさばさした」などの印象を受ける.これらの印象は,テクスチャの構成要素とすべき微小な形状特徴の組み合わせによるのではないかとの仮説が,本研究のアイデアである.本年度は,この微小な形状を抽出するフィルタバンクの構築と,その評価をおこなった. 本年度の研究の結果,「白かど」「白つぶ」「白せん」「白みぞ」「だん」「黒かど」「黒つぶ」「黒せん」「黒みぞ」と名づけた9種の微小形状を抽出するフィルタバンクを構築することで,さまざまな自然なテクスチャをを識別可能なほど,特徴を抽出することに成功した. フィルタバンクの評価をおこなうため,自然なテクスチャ画像320枚を使って実際にクラスタリングをおこなった.各微小形状を抽出するフィルタの出力画像のr.m.s.(2乗平均の平方根)値を特徴値として,クラスタリングする.この結果,人間の視覚からみても納得のできる70クラスタに分類が可能であった.自然なテクスチャをこれほど多数に分類する手法はこれまで存在しなかった. この成果を3rd Asia-Pasicic Conference on Control and Mesurementにおいて発表した.また,電子情報通信学会に論文を投稿中である. しかし,人間の感覚と合致しない例もみられた.その代表的な例が,細長い草が堆積したようなテクスチャと,豆が堆積したようなテクスチャが,堆積物のクラスタを構成してしまったものである.人間の感覚では,両者は明確に区別されるが,構築したフィルタバンクの出力ではまったく識別できず,さらに解像度を変えた分析が必要であることがわかった.そこで来年度に向けた,多重解像度による分析手法の検討を行っている段階である.また,本年度はこのフィルタバンクを用いた応用研究として,ステレオ画像からの視差検出をおこない,第4回画像センシングシンポジウムで発表をおこなった.
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