無限精度の実数の上での計算を考えるための今までの枠組み(Type2-TM)では、十分な関数の記述能力をあたえる様な(admissible)実数の表現方法はすべて冗長性を伴うことが知られていた。それに対して、新たな実数計算の枠組みとしてNM2-machine(non-deterministic multihead type 2 machine)とGray code表現という具数の表現を提唱し、この組み合わせでは、冗長性を持たずにadmissibleな表現と同等の実数関数の記述能力が存在することを示した。このことは、実数がその上の計算構造と共に文字の無限列の中に埋め込まれることを意味しており、実数の上の計算可能な関数を文字列の上の関数として直接に扱うことができ、応用が考えられる。また、この表現の元で、さまざまなアルゴリズムを構成し、この表現の持つ3つの再帰的な構造が、co-inductiveなアルゴリズムの表現に寄与することを示した。また、この枠組みのプロトタイプの実装を行った。 この枠組みは、まだ、実数の上の計算を記述するためのプログラミング言語としては、実数の表現に冗長性がない代わりに関数の記述に冗長性が必要になっており、制限が多い。この両者の溝を埋め、この表現に見合ったプログラミング言語について考え、その言語としての性質を調べ、そのこの機械への翻訳方法を考えるのは、来年度への課題である。
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