本研究の最終的な目的は、ハードウェア論理とプログラム処理とを柔らかなシステム仕様として統合的に記述し、これらを段階的に漸次詳細化する過程を通して、自律分散型超並列ULSIシステムのソフトウェアとハードウェア実現法とを自動生成する手法、ならびに、その支援環境を確立することにある。本奨励研究では、その一環として、画像・通信分野をターゲットとした動的データ駆動型メディアプロセッサDDMPのための並列処理ソフトウェアの自動生成手法を確立し、実用的な応用分野への適用を可能にすることを目的としている。 本年度は多次元ストリームデー夕を対象とする処理を中心に検討を進め、以下の研究成果が得られた。 (1) 多次元ストリーム処理の図的仕様記述法:多次元データストリームの情報は、標本化周期などの時間的な情報と、データ形式のような空間的な構造情報に分類できる。前者はパイプライン型並列処理に、後者は同時並行処理に関連して、アルゴリズムを左右する重要な情報である。従って、これらを分離して階層的に定義でき、信号流れ図や機能ブロックなどと容易に関連付けられる図的記法を定式化した。 (2) 中間言語の多次元ストリーム処理への拡張:多次元データストリームを受理する多重・並列プロセスの仕様記述に対して、その検証性・可搬性を保証するために、従来の動的データ駆動型処理モデルを拡張した。即ち、上述の図的仕様記述からの直接生成が可能な多次元タグ形式左その基本オペレータを導入しても、トークンの生成・消費に関する安全性を保証できるストリーム型処理モデルを定式化した。 (3) 仕様記述からのプログラム自動生成系の構築:(1)および(2)に基づく自動生成系の一部を、備品として購入したグラフィックス・ワークステーションGWS上に実現した。
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