本年度は、マルチメディアデータを対象とする検索システムの実現を目標とし、実験用データベースの作成と、検索システムの実装を行った。まず、実験用データベースは、アメリカ航空宇宙局(NASA)がインターネット上で公開しているスペースシャトルの静止画像と動画像を用いて構築した。動画像についてはシーンチェンジを検出し、代表的なフレームを静止画像として抜き出して使用した。このようにして、およそ4万枚の画像を得ることができた。そして、これらの画像について、各々、色の出現頻度情報(カラーヒストグラム)を求め、その類似性に基づいて画像を検索するシステムを実装した。システムの実装に当たっては、類似検索に適したインデックス構造であるSR-tree(Sphere/Rectangle-tree)を採用し、静的構築法に拡張した上で実装した。静的構築法とは与えられたデータの集合に対して最適なインデックスを構築する手法のことであり、データが逐次追加される動的構築法と対になる構築法である。SR-treeはこれまで動的に構築されるインデックス構造として提案されており、静的構築法については検討が行われていなかった。また、動的構築法についても、直観的な考察に基づいて設計されており、その理論的根拠が明らかではなかった。そこで、本研究では、まず、動的構築法の理論的根拠を解析し、次に、その結果を応用することで静的構築法を実現した。そして、その妥当性を実験用データベースで評価した結果、静的構築法を用いることで検索時の処理コストが、動的構築法に比べて70〜80%に減少することが明らかになった。来年度は、本年度構築したデータベースと検索システムを、既存のテキスト情報を対象とする視覚的検索システムに統合し、視覚的検索システムのマルチメディア情報に対する有効性を評価していく計画である。
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