本研究の目的は、人間の新しい注視点を決定する際に関係する要因を定量的に分析することであった。平成10年度においては、主要設備であるアイトラキングシステムを利用し、三種類の視標を提示された時の被験者の視覚経路を測定し、主要設備であるパソナルコンピュータに取りこみ、ビジュアルサーチにおける眼球運動の解析を行った。眼球運動を注視成分とサッカード成分に分離し、それそれの水平移動、垂直移動の平均および分散を求め、また一秒あたりの注視点が発生する回数も求めた。特定なパターンを提示されたとき、複製しにくい動的な生体データとして視線運動の諸特徴には、個人に固有な特徴の有無も検討した。本研究を通して得られた新たな知見は、人間が特定のパターンを見た際の眼球運動の特徴はダイナミックに変動しているが、その変動の状態は個人に無関係ではないことであった。まだ実用に至る結果ではないが、自分と他人を区別できているとみられる部分もあり、全く使えないわけでもないようだ。今後は、人間の静的生体特徴と動的生体特徴と合成し、新しい個人認証システムの構築の研究に進める予定である。
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