研究概要 |
本年度は,「生体テクスチャの認識システム」を実現するため,主に次の2項目に関して検討を進めた. (1) 鼻紋の特徴を効率良く表現するためのデータ構造の確立 鼻紋線の端点や分岐点,端点・分岐点同士の接続関係,おのおのの鼻紋線の太さなど,鼻紋の特徴的な部分を,計算機上で漏れなく,しかも効率的に表現するため,翼状エッジ構造(WES)を基本としたグラフ的な表現形式で鼻紋データを構成した.そして,スキャナおよびディジタルカメラで採取した各種の鼻紋パターンに対し,雑音を除去して上記のデータ構造に自動変換する効果的な前処理法を開発した. (2) 成長変化にも対処可能な鼻紋認識アルゴリズムの開発 前述の(1)のデータ構造に基づく鼻紋認識問題はグラフマッチング的な面題となる.しかし,鼻紋は成長変化を受けるため,仔牛と成牛ではグラフの節点(鼻紋線の端点と分岐点に対応)が増減することになる.そこで,このような場合にも柔軟に対処できるように,縦型探索法を基本として,認識にとって本質的でない節点を無視して探索を行う「節点の先読み処理」を取り入れた新しいマッチングアルゴリズムを開発した.現在,種々の鼻紋パターンに対して本手法を適用し,その効果を検証している段階である. 今後は更なる適用実験を進めるとともに,鼻紋認識能力の頑健性を向上させるため,ハフ変換的な手法を取り入れることを考えている(既にこれに関連して,任意の図形パターンを極めて高速に認識する手法を開発している).そして,その結果を踏まえてより実用的な生体テクスチャ認識システムの確立を目指す計画である.
|