研究概要 |
本年度は「形状変化を伴う弾性物体の投影像間における各部位の対応付け」を目指し,弾性物体の3次元的な表現を仮想的に実現するために以下のことを行った. 現在コンピュータ診断支援の分野において,バーチャルリアリティを用いたナビゲーション診断を目指して,人体臓器の仮想化が提唱されている.そこで,本研究では胃という弾性物体を対象とした,三次元可変モデルを提案する.これは腹部X線CT像より胃内部領域の境界面における代表点を取り出すことで得られる表面の三次元胃内壁モデルである.この仮想モデルは投影像間の対応付けのみならず,人体の可視化という点から,放射線技師等への教育用シミュレータとしての応用が考えられる. 胃X線像の撮影時の様々なカメラパラメータや,胃自身が持つ医学的,または物理的な特性などの知識をモデルへと簡易に導入するのが難しい.そこで,腹部X線CT像から胃の表面つまり胃の内壁から代表点を抽出し,それらを結んだ三角形の集合を三次元胃内壁モデルとして提案する.また,抽出した代表点を制御点とし,それらを胃の弾性や胃内部の空気圧,胃の周囲の臓器からうける力,重力,そしてX線撮影時に胃に働く最も大きな力といわれるバリウムからの力などの変形要素を模擬することで,胃の変形を試みた.その結果,部分的には問題はあるが,当初の目的を達成するには十分な精度であった.
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