研究概要 |
NP完全問題の代表例である巡回セールスマン問題(TSP)をとりあげ,TSPを解く量子アルゴリズムを開発した.具体的には,TSPの目的関数を2次形式というより一般的な形に書き換え,その関数の最小値をもとめる量子回路を構成した.ここで得られた量子アルゴリズムは,TSPのみならず,TSPを含む組合せ最適化問題のほとんどに適用できる汎用性の高いものである.しかしながら,その計算量に関しては,計算結果の観測を多項式時間で行えるという仮定を用いなければ,多項式時間で実行できないことがわかった.この量子アルゴリズムは,TSPだけでなく適用範囲が広いものであることから,この種の組合せ最適化問題の解法では,古典的な解決の延長で考えるのではなく,個々の問題の特徴に応じた工夫が量子アルゴリズムに必要と思われる.これに関しては,現在も研究中である.また,このアルゴリズムを実際にシュミレーションするために,ショアのアルゴリズムを例に,シュミレータをパーソナルコンピュータ上で作成した.ただし,計算量が膨大なため,プログラムにかなりの工夫と技巧が必要であることがわかってきた.さらに,これらの結果を視覚認識の情報処理構造に応用するために,「視覚の法則」に関する過去の研究成果(実験なども含む)を幅広い研究分野からまとめ,整理しており,現在も遂行中である.特に,ファインマンの経路積分の計算ならびにホフマンのリー環による錯視の理論を量子アルゴリズムで実現させる方法を考案中である.
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