研究概要 |
前年度の研究に引き続き,ショアのアルゴリズムを動かすことができるシュミレータをより一般的な量子アルゴリズムでも動作するように,シュミレータの機能を拡張した.その上で,実際に,前年度の巡回セールスマン問題(TSP)の量子アルゴリズムを実行した.その結果,都市数が大きくなるに従って,観測の回数が非常に多くなり,実際の応用には,目的関数に適当な変換を施すなど,観測の回数が少なくてすむ方法を考案する必要があることがわかった. 前年度の研究成果と上の研究成果からわかるように,量子コンピュータの数理構造をヒトの視覚認識構造の解明に直接用いるには計算量の大幅な減少と入力データの適切な符号化が必要になってくる.そこで,量子コンピュータと同じ並列分散処理構造をもつ数理モデルにパーセプトロン(ニューラルネットワークの一つ)を用いて,パーセプトロンの数理構造と認識可能な入力情報の関係について調べた.その結果,入力情報間の距離dと単純パーセプトロンを構成する素子数nとの比が,単純パーセプトロンの学習できるパターン数に限界を与えることを理論的に導くことができた.さらに,これらの結果は,従来の統計力学におけるレプリカ法の結果とほぼ一致しており,かつ,レプリカ法よりも具体的な応用が可能な結果を得ることができた.つまり,レプリカ法とは異なり,視覚による個々の認識には,適当な符号構造があることが示唆できた.この結果は,情報理論的な見地から見ても,従来のレプリカ法では得られなかった多くの知見と応用を与えることができる.
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