図的推論による高分子立体構造の分類と予測に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10780230
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 大川 剛直 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30223738)
• キーワード: 蛋白質立体構造 / 高分子立体構造 / 図的推論 / 石炭分子構造 / パターン処理 / 記号処理 / 構造予測 / 分類

研究概要

本研究では、高分子の立体構造を計算機により自動的に分類、予測することを目的として、計算機処理可能な構造の表現方式の提案と、それを用いた分類、予測の方法について検討した。具体的には、蛋白質の立体構造と石炭の分子構造を対象に、以下の成果を得た。
まず第1に、蛋白質立体構造を構成する基本要素である二次構造の間に成立する空間的な関係を、図的に表現する手法を考案した。この手法では、任意の2つの二次構造SSi,SSjの種類とおおまかな位置関係(両者の角度、距離など)を(i,j)要素の値とした二次元画像として立体構造を表現する。連続する二次構造間の関係は、得られた画像の対角線を含む部分画像として特徴づけられることに着目し、2つの蛋白質に対する画像から、最大共通部分を抽出することにより、立体構造を比較する。本手法は、厳密な構造のマッチングを必要とせず、角度情報が離散的にしか得られない場合や、距離情報の欠落があった場合にも立体構造の比較を実現できることに特徴があり、二次構造の原子配列データが得られない場合でも、トポロジデータをもとに類似したトポロジを有する蛋白質を検索することが可能となった。
次に、石炭の分子構造を格子モデルにより、図的に取り扱う枠組を考案した。具体的には、分子構造を囲む立体格子を考え、各格子点の種類を原子からの物理的距離に基づいて区別することで、構造内の疎密度の評価を可能とした。これを用いて、モデル内で疎になっている空間に部分構造を追加、接続していくことで、全体的に疎密の均一化を図った分子構造を構築する。得られた分子構造が石炭の予測分子モデルとなる。実石炭のデータをもとに、本手法を用いてその分子構造を予測した結果、実測値に近似する密度を持つ分子構造の予測が可能となった。

研究成果

• [文献書誌] 井林,大川 他: "遺伝的アルゴリズムを用いた石炭分子構造の構築" 電気学会 電子情報システム部門誌. Vol.118,No.9. 1355-1361 (1998)
• [文献書誌] T.Ohkawa et al.: "Classification and feature extraction of protein structures based on structure transformation" International Journal of Antificial Intelligence Tools. 発表予定 (1999)
• [文献書誌] S.Ibayashi,T.Ohkawa et al.: "Coal molecular structure construction by genetic algorithm" Proc.of 3rd IEEE Symp.on Intelligence in Neural and Biological Systems. 111-115 (1998)
• [文献書誌] T.Maeda,K.Kamada,T.Ohkawa et al.: "Feature Extraction of Protein folds based on secondary structure transformation" Proc.of 3rd IEEE Symp.on Intelligence in Neural and Biological Systems. 156-162 (1998)
• [文献書誌] T.Ohkawa et al.: "Case based approach to construction of coal molecular structure model" Tasks and Methods in Applied Artificial Intelligence. Lecture Notes in AI,1416. 547-556 (1998)
• [文献書誌] T.Ohkawa et al.: "Structural classification of proteins based on symbolic representation of secondary structures topology" Proc.of 2nd International Workshop on Intelligent Control. 400-403 (1998)