研究概要 |
1. 検索モデルの検討とサーベイによる評価 事例ベース推論における検索モデルについて検討し,事例検索は,属性集合f_mに属する属性の値が等しい事例群を検索し,その中から属性集合f_sを用いて問題pと候補事例cの類似度sim(p,c)を計算して,その類似度が最も大きい事例を選択する処理であると捉えた.このモデルに従えば,事例ベースが決定木のように索引付けされており,属性値の比較によって木を葉まで辿って事例を得るようなシステムは,属性集合f_mによって事例が選択され,属性集合f_sは空であると定義することにより,定式化できる.反対に,問題と事例の類似度のみに着目し,事例ベース中の全ての事例との類似度を計算するシステムはf_mを空とすることにより,定式化できる.過去の事例ベース推論システムに関するサーベイの結果,事例修正を自動的に行うシステムの多くはこのモデルに従うことがわかった. 2. 検索モデルを考慮した忘却と一般化・特殊化による事例ベース管理処理 これまでの研究で実現した事例の忘却において,致命的な忘却を防ぐための事例空間の分割には,属性集合f_mを用いること,事例間の距離に基づく戦略では,属性集合f_mの異なる事例は対象外として,事例間の距離を計算するために,sim(p,c)の逆数を用いることとする.また,事例の一般化・特殊化においては,一般化と特殊化の対象とする属性は,f_sに含まれる属性のみとする.事例ベース推論による電力系統事故時復旧を対象としてシミュレーションを行った結果,これらの方針に基づく事例ベース管理法は,領域知識に基づいて忘却条件や一般化・特殊化の対象を設定した方法とほぼ同等の性能を示した.これは,検索モデルに基づいて忘却や一般化・特殊化の戦略を設定できる可能性を示している.その詳細については今後更に検討を行いたい.
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