研究概要 |
感性情報の持つ「主観性」を数理モデルで表現し、ヒューマンフレンドリなインターフェイスを構築することを目的として、感性情報の表現,およびその処理システムに関する研究を行った。本研究では特に感性情報として、感情を表現する語(感情語)を取り扱う。感情語について数値情報と組み合わせて表現し、これをイメージコードと呼ぶことにする。イメージコードの数値データはベクトル形式で感情空間内で表現されるものとする。イメージコード群に対して、主観情報処理を写像関数で表現した主観観測モデル理論を用いて感情処理システムを構築した。 まず、感情心理学におけるPlutchikの感情の立体モデル理論の中の公準をもとに形式的に数値を設定した理想感情イメージコード群を作成する。しかしこの方法で作成されたイメージコード群では感情の持つ主観的な面を表現することができないことがわかった。そこで理想感情イメージコードの値に乱数を加え、擬似的に人間の持つ感情の揺れを表現して比較実験を行った.さらに研究室内の人間へアンケートを実施し、感情に対する実人間のイメージを反映させた感情イメージコード辞書を作成した。この3つのイメージコード辞書を用いて主観観測モデル理論の特性、感情処理システム構築の可能性について調べた。その結果感情を数値的データとして表現する場合、なんらかの形でゆらぎを導入する必要があることがわかった。 また応用実験として感情の推移規則生成に関する研究を行った。ここで述べる感情の推移とは、例えばある人物が、繰り返し感情的な認識を行うときに、どのように推移していくかとする。この感情推移ルール作成のための数学的なモデルを構築した。このモデルで生成される感情の推移は、あらかじめ推移ルールを決定しなくてもイメージコード群によって自動的に生成される。本研究の成果は例えば人工感情処理システムとして応用可能であると思われる。
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