当初計画における平成10年度のテーマは、大きく分けて以下の2点であった。すなわち、1.画像データベースの基礎的なモデルとなる「画像内容素の階層モデル」に組み込むための種々の画像処理手法について、これを新規に創造するかまたは既存手法を問題領域に照らし合わせて改良すること、2.衛星観測データを日本とタイの両方の観測拠点から収集し蓄積しながら、試験的な画像検索システムを構築すること、の2点である。つこれらのテーマに対する本年度の成果をまとめると以下のようになる。まず、第一の点に関しては、画像分類の問題に関して、衛星画像の特徴をうまく活用した、統計的パターン認識に基づく画像分類法を提案した。そしてミクセルと呼ばれる画素の統計的扱いに対して、全く新しい見方を提供することに成功した。また画像内容検索の問題に関して、遺伝的アルゴリズムを活用した画像散策法を新たに提案し、このアイデアがユーザに適応した画像検索法の新たな方法論として大きな可能性を秘めていることを示した。さらに画像表現モデルの基礎となるグラフ構造に関しても、計算速度向上の問題に関して新たなアイデアを現在検討中である。一方、第二の点に関しては、タイの衛星画像の試験的な収集は開始したものの、いまだ収集は運用レベルにまでは達していない。これは主として、ネットワークの整備に時間を要したことが原因となっている。ただしハードディスクなどの資源は徐々に整いつつあるため、衛星データ収集も平成11年度には開始できる予定である。また試験的な画像検索システムも作成されてはいるが、まだ公開できるレベルにまでは達していない。しかし当初計画においても画像データベースの公開は平成11年度を目標としており、従って平成11年度はこの課題を大きな目標として研究を進めていく予定である。
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