研究概要 |
本年度は,昨年度の研究成果を受けて,文字の構造解析に基づく手書き文字認識の高精度化と,その文字認識手法を手書き宛名認識に適用し,総合的な認識システムを構築することが目標であった.この目的を達成するため,本研究では2つの課題に的を絞り研究を行った.1つは手書き宛名を構成する個々の文字を高精度に認識するための手法に関する検討である.従来の手書き文字認識では,文字画像の解析によって文字を構成する縦線・横線・斜め線などの構成要素を抽出することが困難であったため,筆者の癖などによる崩し字の認識が非常に困難であった.この問題に対処するため,本研究ではオンライン手書き筆跡データを用いた新しい認識手法を提案した.筆跡データは,文字の形だけでなく,筆順が情報として含まれるので,各々の文字がどのようなストロークで構成されているのかを解析するのが容易であり,その結果として崩し字などの低品質文字に対して高精度な認識が可能となった.また,低品質文字の誤認識に良く見られる類似文字への誤認識についても非線形混合関数を用いた手法を提案し,認識率の改善を行った.2つめは,手書き宛名全体を高精度かつ高速に認識するための手法に関する検討である.手書き宛名認識では,書かれている文字列が住所であるという知識を用いて,住所録を併用した認識が有効である.しかし,全国の住所リストは数十万件にも上るため,認識結果と住所録とを照合するには膨大な時間が必要となる.本研究では,このような問題に対処するため,候補字種を動的に抽出し,候補宛名に優先度を付けることにより,高速で高精度な手書き宛名認識手法を提案した.以上の研究成果により,90%以上の精度で手書き宛名を認識することが可能となった.
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