製造工程における多変量原因系と多変量結果系との関係、あるいは製品の多変量設計特性(物理・科学的特性)とそれを官能評価した多変量感覚特性との関連を解析するための統計的方法としては、正準相関分析が挙げられる。正準相関分析では、結果系と原因系の変数群をそれぞれの線形結合特性(正準変量)を、その相関が最大となるように求める。しかし、結果系に関しては単純な線形結合特性ではなく、共変量の動きに伴ない、結果特性がどのように動くかといった「多変量のパターン」に興味があることも多い。実際、そのパターン変動が共変量のどの要因に寄与するかを知りたい場合も多い。ところが、この種の問題は、従来全く議論されていなかった。本研究は、この問題を扱う統計的方法を始めて提案したものである。本方法によれば、xとyとの間には、クラスター毎に、独自の関数関係のあるデータ構造、すなわち、yの空間でデータがいくつかのクラスターに分けられるように分布し、その各クラスターが対応する共変量xの多変量空間とおいてもクラスターをなすという、混合的データ構造が把握できる。これにより、従来の記述多変量解析手法では把握できなかった構造の解析が可能であることを示した。その成果は、論文「共変量のあるクラスター分析」にまとめられ、「品質」誌、Vol.28、No.2に掲載された。 今後は、結果系のパターンとして、経済的なデータのパターン、感覚特性のパターン等、パターンに意味のある広い範囲での応用可能性も検討していく。さらに、各多変量データ構造に対して、正準相関分析との比較も詳細に行っていく。
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