1993年以降の日本の連立政権の推移を見ると、細川政権、村山政権、第二次橋本政権のそれぞれの発足時期に、政権が大きく変化していることが分かる。本研究の最終目的はどのような連立構造がより安定的であるかを知ることであるが、平成10年度はこれらの変動のあった時期の連立形成行動が、各政党にとって好ましい行動だったのかどうかを提携構造を考慮したシャープレイ値(以下、提携値)を用いて分析した。提携値はプレイヤー(政党)が連立を作ってまとまって行動した場合の、議決におけるその政党の影響を表していると考えられる。従って理論的には、国会において影響を強めようとする政党は、その政党の提携値が大きくなるような提携を作ろうとすると考えられる。分析の結果、特に細川政権発足時にカギを握ったとされる日本新党、新党さきがけにとって、自民党と組んだ時に比べて、非自民連立政権は彼らの影響を強める好ましい選択であったことが顕著に示された。この結果は第1回実践的ゲーム理論の国際会議、第26回数理社会学会大会などで報告すると共に、現在論文を投稿中である。 さらにさまざまな提携構造を考えた上で研究を進めた結果、細川政権は議席数としては多少過剰な人数を持つ(最小勝利提携ではない)連立でありながら、その構造が非常に安定度の高いものであることが示される。この結果は実証分析として価値があるだけでなく、「安定した連立は最小勝利提携である」という従来の理論を否定する意味でも貢献があると思われる。
|