均衡制約を持つ非線形最適化問題に対する解法に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10780277
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 田地 宏一 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 講師 (00252833)
• キーワード: 平滑化法 / ニュートン法 / 近似関数 / 均衡問題 / ニューラルネットワーク / 誤差逆伝搬法 / 利潤最大化 / 炭素税

研究概要

昨年度、本研究において、微分不可能な方程式に対する平滑化ニュートン法を提案した。また、この方法を非線形相補性問題に適用し、数値実験を通してセミスムーズな非線形方程式に対する平滑化法に基づいた解法が、理論面のみならず実用上も有効であることを示した。本年度は、まず、平滑化法のさらなる実用性を検証するため、ニューラルネットワークの学習に平滑化法を適用した。ニューラルネットワークの学習では、評価関数として二乗誤差関数がよく用いられるが、これには、誤った教師データの影響を受けやすいという欠点がある。一方、絶対誤差を評価関数とする学習では、その影響は少なくなるが、絶対誤差関数は微分不可能である。そこで、絶対誤差関数を平滑近似し、誤差逆伝搬法を用いた学習法を提案した。その結果、通常の誤差逆伝搬法よりも早く収束し、また、誤りデータの影響を受けにくい学習法を得ることができた。現在は、平滑法を用いた、線形計画法や非線形計画法の解法について研究を進めている。また、均衡制約を持つ非線形最適化問題の応用例として、世界各国が炭素税を導入した際の、経済的な影響を評価するモデルを作成した。このモデルでは、輸出入の競合を考慮したため、各国毎に、輸出価格に関する均衡制約を持った利潤最大化問題を解くモデルとなっている。作成したモデルを用いて評価し、炭素税の影響は非常に少ないという結果を得た。この結果は論文としてまとめられ、現在投稿中である。その他、競合のある最適化問題の応用例として、ANPなどの意思決定支援手法や、半導体生産工程、鉄鋼生産の熱間圧延工程について研究を行い、効果的なスケジューリング法を提案するなどの成果を上げた。

研究成果

• [文献書誌] K.Taji: "On a Revised Analytic Network Process (ANP) for Avoiding Irrational Rank Reversal -A Revised Normalization Procedure and Calculation Method-"Proceedings of the Fifth International Symposium on the Analytic Hierarchy Process. 141-146 (1999)
• [文献書誌] H.Tamura: "Systems Analysis of the Impact of Environmental Tax on Competitiveness in International Market"1999 IEEE International Conference on Systems,Man,and Cybernetics. II. 592-597 (1999)
• [文献書誌] H.Tamura: "A Decision Maker Friendly Method of Extracting Preference Information for Preference Function Modeling"1999 IEEE International Conference on Systems,Man,and Cybernetics. III. 1007-1012 (1999)
• [文献書誌] K.Taji: "On Error Backpropagation Algorithm Using Absolute Error Function"1999 IEEE International Conference on Systems,Man,and Cybernetics. V. 401-406 (1999)
• [文献書誌] 田地宏一: "ライン全体を考慮した半導体生産スケジューリング"生産スケジューリング・シンポジウム'99講演論文集. 59-64 (1999)
• [文献書誌] 高柳仁史: "制約論理プログラミング技術を用いたアルミニウムスラブ加熱炉への挿入本数最大化の検討"生産スケジューリング・シンポジウム'99講演論文集. 94-99 (1999)
• [文献書誌] 田村垣之: "自然災害リスクの軽減を目的とした意思決定分析のモデル化"システム制御情報学会論文誌. 6. (2000)