本年は、神戸の住工混在地区(長田地区)において企業の立地動向と土地利用変化に関する分析を行った。長田地区は被災地であるが、本研究は大都市住工混在地域の総合的研究であるため、被災地としてだけではなく、一般的な住工混在地区として、震災前から現在までの長期にわたる動向をとらえている。結果の概要は以下の通りである。 (1) 企業の立地動向:震災前の長田では、賃貸工場ビルを受け皿に、企業の活発な創業・移転・消失がみられたが、近年は創業・消失とも少なくなり、企業数は緩やかに減少していた。震災後の企業の再開は早く、移転については長田地区の集積を重視する姿勢がうかがえる。しかし、震災直後に脱退した企業が多く、その後も企業数は伸び悩み、停滞傾向が強まっている。企業の分布形態は、1964年には地区内に比較的企業が均等に分布していたが、その後東西に二極化する傾向にあり、震災直前には周辺部・地区外への移転が増加するなど、集積地が拡散する傾向も表れていた。震災後は西区域を中心に企業が流失し、集積地拡散の動きが加速している。 (2) 土地利用変化:震災前の当該地区では、高密で住居系中心の街区と、低密で工業系中心の街区がみられた。震災後の変化は、全般的に復旧率が震災前の6割に満たず、特に住宅の割合が低い一方、商業系がもっとも高く、商業地化の傾向がみられる。工業系の土地利用の中では工場ビルの復旧が遅れ、狭小な独立工場の割合が増大している。高密な街区ほど復旧率が低いが、その中では小工場の復旧率が相対的に高く工業系の構成比が増加、住居系は減少しているのに対し、低密街区では工業系の構成比が減少、住居系が増加して工場に接する住宅の割合が増加している。またマンションの侵入が、 密街区では高さの混在、低密街区や工業系特化街区においては新たな住工混在を引き起こしつつある。
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