研究概要 |
微動アレー探査は,微動を地震計アレー観測し,微動に含まれる表面波の位相速度を識別し,その分散関係を利用して地下S波速度構造を決定する探査法である.今年度の研究では,観測に特殊な円形アレーを必要とする空間自己相関法(SPAC法)における円周上の地震計の個数の違いにより,推定されるレイリー波やラブ波の位相速度の分散がどの程度変化するのかを実際の観測を実施することにより検討した. 岩手大学工学部グラウンドにおいて,中心に1台,円周上に4台から7台の3成分地震計を設置し,4回の微動の円形アレー観測を実施した.アレーの半径は45m,30mである.なお,6台配置したアレー記録から3台配置を作成した.円周上の地震計の間隔はいづれの場合も均等間隔配置とした.よって,正三角形から正七角形の配置のアレー観測記録を得ることができた.観測は車両などの通行ノイズが比較的少ない深夜に実施した.微動の上下動成分からはRayleigh波の位相速度を,水平動成分からはLove波の位相速度を推定した. 微動の上下動成分からRayleigh波を推定したところ,三角形配置から七角形配置の位相速度は800から300m/sの範囲ですべてほとんど同じ値を示していた.すでにこの地点で求められている地下構造モデルから計算された理論位相速度と推定された観測位相速度との残差から計算された相対標準偏差はすべての配置で10%以下の値を示した.一方,微動の水平動成分からLove波の位相速度を推定したところ,600m/sか200m/sの範囲で推定された.計算された相対標準偏差も,ほぼ同様な結果を示していた.これらの結果から,空間自己相関法を用いて微動アレー観測から表面波の位相速度を推定する場合,円周上に3台の地震計を有するアレー,すなわち,三角形アレーで十分であることが示された.
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