研究概要 |
火山噴火災害の回避・軽減には,「いつ噴火するのか?」といった予知情報に加えて,噴火が時間の経過とともにどのように推移するのかを予測することが重要である.そのためには,過去に起こった噴火の推移を具体的に把握しておく必要がある.過去の噴火の推移を知るには,噴火堆積物の層相や層位関係に着目した研究が不可欠であるが,それだけでは前兆現象や噴火の継続時間に関する情報を十分得ることはできないので,文字記録の残された歴史時代の噴火に着目し,噴火堆積物とその記録を対応づけて噴火を復元するとよい.そこで,安永八年十月朔日昼八つ過ぎ(1779年11月8日14時頃)に始まった,桜島火山の安永噴火の史料について,できるだけその原典にあたるとともに,その記述を火山学的に検討して,この時の噴火の推移について考察した. その結果,桜島安永噴火の推移は,海底での噴火の発生・新島の誕生と大正噴火直後の大きな地震をのぞけば,大正三年(1914年)に起こった大正噴火のそれときわめてよく似ている.大正噴火の直後には,古きに学ぶべく,安永噴火の活動の推移が注目されてその史料が集められた(鹿児島県立図書館所蔵の『安永桜島噴火史料 上・下』など).安永噴火を記述した多くの史料では文明噴火のことが記載されている,同じ過ちを繰り返さないためには,噴火予知の研究とともに過去の噴火の推移について,史料と噴出物の両面から調査・研究を進めていく必要がある.
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