本研究では、宇宙飛翔体上のアンテナ、それによる電波放射、観測、およびアンテナ周辺プラズマの相互関係を3次元電磁粒子コードを用いた計算機実験で定量解析することが目的である。計算機実験では、形状、材質などの点で現実的なパラメータを考慮したアンテナを考え、ホットプラズマ中での電流電圧特性、近傍のシース形成に関して解析を行なう。これにより飛翔体近傍のプラズマの挙動について理解を深める。次に、アンテナ近傍でのプラズマダイナミクスがアンテナの電波放射、および受信にどのように影響を与えるかについて解析を行なう。計算機実験では、プラズマの密度、温度、磁場、アンテナ形状、電位などをパラメータにしてアンテナからの電波放射の様子を定量的に求め、得られた結果と既存の理論との比較検討を行う。本研究の定量的解析により、実際の宇宙プラズマ空間での電波利用および観測の際に非常に有益になる工学的及び理学的な知見を得ることができる。本年度は、まず、計算機実験で使用する3次元電磁粒子コードの改良を行ない、宇宙飛翔体表面とそこに取り付けられたアンテナを計算機実験空間に取り込む工夫を施した。アンテナの形状を再現するために、サブセル法を採用し、格子点間隔より小さなアンテナ幅を仮定することができるようになった。しかし、アンテナ近傍では、グリッド間の電磁界は1/rの変化を仮定することになり、一般性が崩れる。そこで、アンテナ近傍領域について細かい格子点を採用するサブグリッド法についてのテストを行ない、1次元モデルでの動作を確認した。次に、モデル空間を取り囲む面における境界条件について改良を加える。これまでのほとんどの計算機実験では周期境界条件が用いられてきたが、アンテナを含む非一様空間を扱う本研究では孤立系モデル空間を実現する必要がある。そのために、モデル空間内で発生した電磁場の擾乱が境界で反射しないような工夫を施した。この結果、アンテナから放射された電磁界の反射を抑えることができるようになった。この改良されたコードを用いて、真空空間でのアンテナから放射された電波の伝搬の様子、および特性インピーダンスの確認を行なった。得られた結果は微小ダイポールアンテナなどの理論と比較し、計算機実験でアンテナ問題が矛盾無く解き進めることができることが明らかになった。計算機実験のグラフィック解析のため、本設備備品費でカラーグラフィックコンピュータを購入した。
|