本研究の課題として開発した軟X線偏光測定器は超高真空蒸着槽、測定槽及び蒸着槽で作成した蒸着薄膜をそれら2つの槽の間で転送する機構を基本として成り立っており、それぞれが良好に動作した。著者には軟X線領域に於ける磁気円二色性測定実験の実績があり、軟X線領域の偏光に関する実験を行う為の基本技術を確立している。むしろ本研究の重要課題は開発した測定器をプラズマ実験に応用することであり、その場合に生じる技術的な問題の解決に取り組んだ他、測定槽をプラズマ発生装置に取り付けるための取り合いダクトの設置も行った。主たる問題点としては超高真空維持と微弱信号の長距離伝送である。前者に対する具体的な対策として、プラズマ容器からのガス流入を防止するシールド膜を2種類作成した。それらは軟X線の吸収特性が異なり、一方は素材に酸素を含まず酸素イオンの線スペクトル領域で吸収を起こさない膜である。厚さは数μmで性能評価では8%の透過率を得た。もう一方の膜は厚さ数千Aで透過率が60%であった。またこの薄膜はベ一カブルなので低排気量の真空ポンプで超高真空を得ることができる。微弱信号の長距離伝送については軟X線検出器の高カウントレート化及び電磁シールドを用いた外部ノイズの遮断によるノイズ特性の向上である。その結果、軟X線スペクトルを低ノイズで測定することが可能となり、偏光測定を実際に行うことができる環境を整えることができた。現在は偏光測定を実際に行いつつあり、研究期間内に装置の開発及び実験支援技術の向上を行うなど一定の成果を確保することができた。
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