非平衡電離プラズマにおける衝突輻射モデルを構築するには、電子衝突励起、電離衝突電離過程がメィンである電離過程プラズマのみならず、再結合過程がメインの再結合プラズマも同等に取り扱う必要がある。スペクトル線を用いたプラズマ診断や放射損失量の評価において詳細な衝突輻射モデルの構築が必要である。本研究ではL殻イオンの衝突輻射モデル構築を目指した。リチウム様イオンについては、河内・藤本(1995)のコードの改良をリチウム様ネオンイオンについて行った。ベリリウム様イオンについては、再結合過程を含んだ詳細な衝突輻射モデルコードをベリリウム様酸素、ネオン、鉄イオンについてそれぞれ構築した。モデル構築にあたり、二電子性再結合過程の速度係数が、終状態にあたるベリリウム様イオンの各励起状態毎に必要なため、Cowanの原子コードを用いた計算を、ベリリウム様ネオン、ベリリウム様酸素についてそれぞれ行った。二電子性再結合速度係数をそれぞれ詳しく調べると、ベリリウム様イオンの励起状態のconfiguration interactionが大きな影響を及ぼすこともわかった。主量子数の低いレベルに対して電子温度が低いときに影響が顕著に現れ、イオンによって異なる。このことは、二電子性再結合係数の単純なスケーリング則による取り扱いが難しいことも示唆している。ベリリウム様イオンの衝突輻射モデルは、電子衝突励起速度係数の原子番号によるスケーリングなどを採り入れて任意の原子番号のイオンに対しても計算できるようにモデルの改良を行っているが、再結合過程に関しては、スケーリングの取り扱いが問題として残った。Configuration interactionを考慮しない単純モデルでは、主量子数の低いレベルヘの二電子性再結合速度係数が低い電子温度では現れない。逆に、電子温度の低い再結合プラズマのプラズマ分光測定から二電子性再結合過程の計算に制限を与えることも可能だろう。
|