バナジウム合金は高融点であり高い熱負荷に耐えられること、低放射化材料であること等から核融合炉構造材料としての検討か進んでいる。特にV-Ti-Cr系合金については種々の照射環境因子や材料因子の材料特性に及ぼす影響についての研究を行っている。材料特性への影響が大きくかつ低温照射での延性低下の要因となる侵入型不純物元素の濃度を低減した合金が基礎的および実用的観点から求められている。本研究においては今年度以下の2点について研究を進めた。 ●比較的侵入型不純物濃度の低い従来の合金におけるヘリウムイオン照射効果に関する研究: 侵入型不純物元素(酸素、窒素、炭素)の濃度が約400wppmのV-Ti-Cr-Si系合金に室温および400℃において30appmまで3MeVのヘリウムイオン照射を行った。エネルギーデグレーダーを用いて表面より約4μmまで深さ方向にほぼ均一な濃度での注入を行いセクショニングと背面研磨によって薄膜を作成し透過型電子顕微鏡によるミクロ組織観察を行った。室温ではイオン照射による欠陥組織は微細で判別できなかったが400℃での照射では約4.5x10^<20>m^<-3>の数密度で微細なブラックトットが観察された。高純度合金のヘリウムイオン照射効果を調べるための基礎的な実験手法を確立した。 ●高純度合金作製のための地金調達と高純度化の方策の検討: 酸素濃度が約70wppmバナジウム地金を入手した。バナジウム地金をさらに高純度化するためには電子ビーム溶解とフローティングゾーン精製を行うことが適当である。酸化物や窒化物および炭化物の形成自由エネルギーが小さい元素(Zr、Y、Al、Ca、Mg)をあらかじめ溶解させスカベンジャーとして活用し後に精製する方法について検討を進めた。
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