本研究では、プラズマ-壁相互作用やブランケット増殖材料からのトリチウム回収に代表される、核融合装置あるいは炉内で使用される各種機能性材料と水素同位体燃料の相互作用(核融合燃料・材料相互作用)の問題に対し、これを表面とバルクが連続した系として捉え、気相との相互作用に伴う表面及びバルク電子特性の変化を同時に測定することにより、表面-バルク間の相関関係を明らかにすることを目的としている。 初年度に当たる今年度は、表面電位を測定する高温ケルビン計の改良を行い、加熱時に電気炉から混入するノイズの低減をはかった結果、ほぼ1000Kまでの高温での測定が可能となった。また、現有の電気伝導度測定装置と前述の高温ケルビン計を1つの装置体系に組み込み、同一のガス組成の下での表面の仕事関数とバルク電気伝導度の同時測定を可能にした。 実験では、まず、固体電解質材料として良く知られているイットリア(Y_2O_3)安定化ジルコニア(ZrO_2)の仕事関数ならびにバルク電気伝導度を、同一の高温・雰囲気組成制御下で測定した。その結果、測定された仕事関数の酸素分圧依存性は、欠陥平衡に基づく理論値と良く一致した。また、バルク電気伝導度については、添加したY_2O_3の濃度により電気伝導の原因となる酸素空孔濃度が決定されるため、気相中の酸素分圧には依存しないが、このことを実験的に確認するとともに、その値も文献値と比較的良く合うことを確認した。
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