プラズマ中の固体表面に入射するイオン束の一部が中性粒子として反射される現象を利用して、入射イオンのエネルギー分布を逆に求める手法について研究を進めた。反射中性粒子のエネルギー分布を飛行時間型エネルギー分析器を用いて得、逆に入射イオンのエネルギー分布を得るものである。本手法の特徴は、プラズマ中に挿入する固体ターゲット板程度(数mm2)の空間分解能が得られること、入射イオン種の弁別を行うこともできることが挙げられる。 プラズマ中のイオンのエネルギー分布をマクスウェル分布とし、固体表面前面に形成される静電シースにおける電位降下も考慮した計算機シミュレーションを行った。上計算には固体とイオンの相互作用において実績のあるTRIM-SPコードを用いた。計算で得られた反射粒子のエネルギー分布の広がりとピークエネルギーから、入射イオンのプラズマ中における温度とシースにおける電位降下がそれぞれ得られることを示すことができた。 核融合科学研究所の直線型プラズマ発生装置TPD-Iにおいて、水素、ヘリウム混合ガスを動作ガスとして用い、本計測手法の原理実証実験を行った。比較的低いエネルギー(20eV程度以上)の中性粒子衝突による二次電子放出率が大きいCu-Be板を用い、二次電子をマイクロチャンネルプレートで増倍して反射粒子のエネルギー分布を得た。得られた反射粒子のエネルギー分布から、水素とヘリウムの粒子種弁別が可能であることを確認した。得られた反射粒子エネルギー分布から計算(TRIM-SPコード)との比較により、入射イオンエネルギー分布を得た。この結果、本手法で得られたシース電位降下は、静電プローブを用いた計測とよく一致した。イオン温度については、TPD-I装置の中性ガス圧力依存性を調べた結果、過去に分光、イオンセンシティブプローブで計測された結果と定性的に一致した。 これらの結果を、物理学会2000年春の分科会において発表した。
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