研究概要 |
核融合科学研究所の現有設備である大型ヘリカル装置(LHD)では約1時間までの長時間・準定常運転実験を計画しているが,本年度は,先ず,そこで要請されるイベント駆動型の実時間データ処理システムの要件の洗い出し作業を,概念設計の一環として行った. この作業では,短パルス運転炉TFTRのために米国プリンストン大学プラズマ物理学研究所(PPPL)で開発されたディスラプション・トリガー・システム(DTS)の仕様と,LHDの長時間放電実験からの要請条件とを比較検討することにより,具体的な実現方法を探ることができた.特に,ここで明確になった問題点としては,PPPLのDTSはあくまでもタイミングシステムであって,データ収集装置としては従来のCAMAC ADCモジュールを使用しているので,実時間データ処理は機能的に不可能であること,また,現在のCAMAC規格ではデータの転送速度が遅く,LHDのような最新鋭で大量の計測データを収集する装置のデータ収集系としては能力不足であること,などが判った. 当初計画の実時間処理型ADCを実現・利用するには,上記の理由でCAMAC規格モジュールでは困難であるという結論に達したので,CAMAC代替新システムの再調査と検討を行った.以上の結論として, 1. イベント生成用の波形弁別器はアナログ回路でありシステム側に特殊な機構は必要ない 2. イベントを伝送するタイミングシステムはLHDで既に使用している計測タイミングシステムで実現可能 3. ADCはCAMAC規格の替わりに高速な最新CompactPCI規格を使用した新たなモジュールを開発する などが具体化の条件として得られたため,これに沿ってCompactPCI規格のADC設計を行った.来期では,開発したモジュールの試験検証と,他システムと連携してのイベント処理,実時間収集の機能を実証する.
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