圧力を非等方にすると粘性の効果が現れる.そこで本年度では、この粘性が三次元平衡の安定性にどのように影響するかについて数値的に調べた.また、同様の散逸的性格を持つ垂直方向の熱伝導の効果についても同時に調べた. 計算手法としては、簡約化MHD方程式に基づく線型安定性コードRESORMを利用した.ここで用いている簡約化MHD方程式は、オームの法則、渦度の方程式、状態方程式の3つの方程式から成り立っており、渦度の方程式および状態方程式に拡散型の粘性項および熱伝導項をそれぞれ加えることによって、これらの散逸の効果を調べた.このとき、粘性項は四階の動径方向微分を含むため、そのまま計算すると五重プロック対角行列の逆行列の計算が必要になり、計算領域と計算時間において大きなロスを生じる.そこで、この項を分離する方法を採用し、もともとのRESORMコードで採用されている三重ブロック対角行列だけで計算できるようにした. 計算は、理想交換型モードに対して不安定な平衡において、理想モードと抵抗性モードの両方に対して行った.その結果、粘性および熱伝導の両方とも両者に対して大きな安定化効果を持つことが得られた.特に、ヘリカル系プラズマの実験においてよく観測されている異常輸送の範囲の粘性および熱伝導係数の値において、大きな成長率の減少が見られる.このことから、この粘性および熱伝導の散逸効果が、CHS装置やLHD装置おいて観測されているメルシエ不安定領域での安定なプラズマの存在を説明するメカニズムの侯補といえる.また、粘性と熱伝導の安定化の違いとして、粘性だけでは交換型モードを完全に安定化することはできないが熱伝導だけでも完全に安定化することができること、また、粘性は流れ関数のモード構造を動径方向に広げる効果があるの対し、熱伝導の方はプラズマ圧力のモード構造を広げる効果があることが得られた.
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