将来の核融合炉を考えれば、技術の習熟したケーブル・イン・コンジット型導体の素線を高温超伝導体の素線に置き換えることが最も効率的で、核融合炉への応用可能性が高いと考えられる。高温超伝導体を用いる最大の利点は、液体窒素が使用できる点にあるが、液体窒素を2相流で強制循環させることは、冷媒の管摩擦抵抗による圧力損失が大きく、実用的ではない。そこで、窒素より沸点の低いヘリウム、ネオンを液体窒素温度まで冷却した冷媒を使用する方法を検討した。しかしながらこれらの冷媒は、従来の超臨界ヘリウムと比較して、密度が小さく圧力損失が大きいため、必要な質量流量を得ることが困難であることが分かった。 ここで強制冷却法から、コイルを周囲から液体窒素で冷やし込む間接冷却法に検討を移した。このとき導体内部には、比較的熱伝導の良いヘリウムを大気圧近傍で充填しておく。核融合炉では核発熱、交流損失等の内部発熱があり、コイル内部の温度を上昇させる。このときの温度上昇は、発熱量とコイルの断面方向熱伝導率で評価できる。発熱量については、ITER関連の論文から調査を行い、コイル構造と熱伝率評価には、大型ヘリカル装置のポロイダルコイルを想定した。導体の断面方向熱伝導率には実測値を導入した。その結果、間接冷却法を用いる場合でも内部の温度上昇を低く抑えることができ、核融合炉として応用が可能であることが分かった。 これにより、コイルの構造を変えることなく、将来、素線を高温超伝導体に置き換えることで、液体窒素で冷却可能なコイルの製作が実現可能であるとの展望が得られた。今後は、さらに詳細な熱分布計算を行うとともに、より具体的な冷却方法、安定性、安全性について検討を加える計画である。
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