当初の目的通り、計測手段が確立されていない極短電子パルス(100フェムト秒以下の電子パルス)を計測する手法の確立を目指し、当施設で発生することが可能なフェムト秒からピコ秒の電子パルスを実際に使用して研究を行ってきた。具体的には、フェムト秒パルス計測として最適化されたコヒーレント遷移放射マイケルソン干渉計(電子ビームが発生するコヒーレント遷移放射を干渉分光させ、取得されたスペクトルから電子パルスを診断する干渉計)を作製し、フェムト秒からピコ秒の電子パルスを計測した。計測では、同時にストリークカメラ(200フェムト秒以上のパルスにおいて非常に信頼性の高い計測手段)も用いて計測し、干渉計による計測結果と比較・検討することで、極短電子パルスの計測法としての干渉法の信頼性・特徴を吟味し、まとめた。その結果、ビームスプリッター、カットオフ周波数など計測波長範囲を決定する要因を目的の電子パルスにとって最適化(バンチ形状因子の値が0.1程度になるよう設定)すること、電荷量の正確な測定および光学アライメントの重要性を定量的に評価することがてき、極短電子パルスの計測法として信頼性のある計測をするための条件を示した。例えば今回の計測では、サブピコ秒パルスにとって最適化された波長取得範囲であったため、ピコ秒パルスの計測にはスペクトルの傾きに誤差が生じ、ひいては計測結果に200フェムト秒の誤差が生じた。また、電荷量測定の5%の誤差は100フェムト秒の計測誤差を生み、ミスアライメント(光学ミラーの調整ミス)は計測不能の原因となる可能性もあることがわかった。
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