1. 本研究では、組織等価型ガス比例計数管を用いて、γ線・中性子・荷電粒子の線エネルギー分布を測定するため、1keV/μm以下〜約1500keV/μmに及ぶ非常に広い測定領域をカバーする必要がある。そこで、計数管のアノードとへリックスにそれぞれ独立した電圧を印加し、さらに計数管に伝わる振動とノイズを最小限に抑えることで、広い測定領域をカバーすることを可能にし、0.15〜1500keV/μmを達成した。 2. 荷電粒子の線エネルギー分布の測定を、陽子70MeVを放医研サイクロトロン、炭素290MeV/nを放医研HIMACでそれぞれ行った。得られた線エネルギー分布は、Continuous Slowing-Down Approximation(CSDA)から推測される分布とはかなり異なり、入射荷電粒子が直接、エネルギーを付与する成分と、入射荷電粒子により発生したδ-線による成分がはっきりと見られた。また、δ-線による成分を調べるため、計数管を構成する壁物質を変えて線エネルギー分布の測定も行った。今後、これらの分布がどのような機構により形成されるのか、計数管の特定の場所に荷電粒子を入射させることにより調べていく。 3. さらに、中性子の線エネルギー分布の測定を、AmBe中性子源を放医研で、D-T15MeV中性子を東北大学FNLて行った。得られた線エネルギー分布は、4種類の異なる壁物質により、発生した電子・陽子・α粒子成分の分布に大きな違いが現れ、エネルギー依存性も確認できた。この違いは、人体に関係する物質に対する線量・線質を評価する上で重要であり、今後、他の中性子エネルギー点も行い、線量・線質に関するデータを導出していく。
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