1. 名古屋大学大気水圏科学研究所による航空機観測が行われた期間でもある1996年9月及び12月の客観解析データを利用して、雲微物理過程及びサブグリッド積雲対流モデルを含む3次元非静カ学メソスケールモデル(PSU-NCAR MM5)により、北西太平洋域の気流場及び積雲生成を再現することができた。これは、衛星画像からの雲域解析結果との比較により妥当性が確認された。 2. 上記で得られた気象場を利用して、同領域での酸性物質の輸送・反応・沈着過程を再現するために、大気化学モデルの構築を行った。利用した大気化学モデルは、38の化学種と90の反応を含むものであるが、湿性沈着量推定に関するモデルはサブグリッドの積雲対流モデルに対するパラメータ化は為されているが、雲微物理過程に基づく水象相への酸性化学物質の移動に関するモデル化は行われていない。本年度の研究では、雲微物理過程での水蒸気の凝結量・雲水の落下速度の情報を用いて酸性化学物質の移動に関する定式化を行った。 3. 大気化学モデルにおけるエアロゾル粒子の役割の重要性が様々な観点から指摘されていることから、長距離輸送モデルに適用可能な大気化学平衡モデルに基づく大気エアロゾルモデルの構築のために、定式化及び1次元モデルによる数値計算を行った。これは、次年度の研究において長距離輸送モデルに適用可能である。 4. 対象領域である東アジア及び北西太平洋地域の窒素酸化物および硫黄酸化物の人為排出量、植物からの炭化水素排出量、海洋からの硫黄含有物質の生成量、航空機・雷放電による窒素酸化物の上空での生成など、シミュレーションに必要な基礎資料の収集・整理を行なった。
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