衛星データを用いて熱収支モニタリングを行なうために、1)地表面近傍における熱収支モデルの開発を行ない、2)そのモデルの衛星データへの適用を試みた。 地表面近傍における熱収支モデルでは、気温、地表面温度、太陽放射量との関係を求めた。この関係を求めるにあたり、必要な物理量である、1)地表面のエネルギーを直接大気へと輸送するため都市環境で重要となる顕然輸送量、2)地表面のエネルギーを蒸散により奪い取り上空で解放される蒸散量(蒸散量は、植生地環境を決める重要なパラメータである)3)地中にエネルギーを貯める地中伝導熱、等も、このモデルを適用して得られる成果物である。 地表面近傍における熱収支モデルを開発するために、これまでに、地表面温度、気温、湿度、風速等を数種類の地表面被覆物上(コンクリート、アスファルト、土壌、草地、木)で1時間毎24時間の測定を行なったきた。本年度は、長期的変動を把握するために、奈良女子大学屋上(コンクリートに樹脂コーティング)に、地表面温度、気温、湿度を測定するロガーを設置した。 これらの測定データを用いて、地表面近傍における熱収支モデルに適用した。コンクリート、アスファルト、土壌、草地に対しては、実験データとモデルからの期待値はほぼ誤差の範囲で一致した。このモデルを用いて、地表面温度を用いて逆算した気温、気温を用いて逆算した地表面温度も、誤差の範囲で測定データを再現できた。木に対してはモデルでデータを再現できなかった理由は、実験で測定した木の樹冠内の気温と表面温度は、モデルで定義された量と異なっていたためと考えられる。今後、木における実験方法、蒸散効率の推定方法等を改良していく必要がある。 衛星データへの適用に関して、本年度は、衛星データから地表面温度を求め、顕熱輸送量の推定を試みた。今後、地中伝導熱、蒸散量、気温等を求めるアルゴリズムの開発を進める予定である。
|