本研究は、強調後方散乱(Back scattering enhancement)や偏光依存パターン(Polarization anisotropy)などの多重散乱に特有な現象を利用した霧・雲の動態・構造解析法を開発する事を目的としている。初年度である平成10年度は、霧と同程度の濃度の微粒子検濁液による多重散乱現象を実験室内で観察し、散乱ピークの幅、偏光依存パターンなどの各種パラメータの実験室レベルでの計測を行った。研究の初期段階では標準微粒子(ポリスチレンラテックス球)検濁液からの多重散乱現象を粒径および濃度をパラメータとして変化させて観察した。これらの実験は後方散乱パターンの偏光依存性の特徴を明らかにする事を目的として行ったもので、霧計測時にはこれらの結果を基に霧粒径・濃度などを推定する予定である。これらの実験の結果、偏光依存パターンの観察できる濃度範囲の粒径への依存性が明らかになった。また、異なる粒径・濃度の組み合わせで同様の偏光依存パターンが現れる事も視覚的に確認されたため、両者の区別を行う必要が出てきた。今後は定量的な評価法を導入することにより、散乱パターンの高精度解析を行う必要がある。また、上述の実験室レベルでの研究と並行して、レーザ光の消散を利用した霧動態の計測システムの開発を行った。このシステムは、大気中にレーザ光を伝播させるとその減衰量が霧などの大気中の散乱体量に依存することを利用し霧濃度を測定するものであり、同時に気象データを測定することにより、霧の客観的な観測データを取得することが可能となる。現在はこのシステムをつかって霧動態の観測を連続して行っている。
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