沖縄島河川水中に含まれる雌性ホルモン様作用物質を検索することを目的として、沖縄島河川に生息するテラピア(Oreochromis mossambicusとO.niloticus)の雄の血中に含まれる雌特異タンパク質(ビテロジェニン)をウサギ抗ビテロジェニン抗血清を用いた2元免疫拡散法で検出した。その結果、沖縄島河川12地点から採集したテラピアのうち、国場川2地点と安謝川下流1地点から採集したテラピアの血漿からビテロジェニンが高濃度で検出された。他の5地点(羽地大川、億首川、天願川、安里川及び今帰仁村サトウキビ畑用水路、)で採集した雄テラピアの血漿からもビテロジェニンが検出される場合もあったが、その割合濃度とも低かった。以上の結果から、安謝川下流と国場川には何らかのビテロジェニン誘導物質(雌性ホルモン様物質)が含まれると考えられた。河川の状態からこの雌性ホルモン様物質は植物エストロジェンの可能性が高かった。 採集した魚の精巣を組織学的に観察した結果、全ての個体で精子形成が行われており、ビテロジェニンの有無による差異は認められなかった。また、精巣中に周辺仁期以下の卵母細胞(精巣卵)を持つ個体が見つかり、その割り合いは安謝川で高かった。以上の組織学的観察の結果、河川中の雌性ホルモン様物質は成魚の生殖能力に及す影響は少ないが、精巣卵の出現から成長過程でなんらかの影響があることも考えられた。
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