環境汚染物質吸入暴露による呼吸器への影響評価のため、基底膜を含む肺組織の構造を模した肺胞モデル培養系を作成し、影.響評価のための鋭敏なマーカーを検討することを目的として、本年度は以下の検討をおこなった。1)肺胞上皮細胞への環境汚染物質暴露の直接的傷害を検出するための"肺胞上皮細胞一基底膜培養系"を作製した。ラット肺胞上床細胞株を肺線維芽細胞順化培地又は線維芽細胞マトリックス存在下でコラーゲンゲルをコートした培養ウェル上で培養することで基底膜形成に成功した。アンモニア処理よりこの組織から上皮細胞を剥離させて得た基底膜標本に、肺血上皮細胞を再播種することにで、I型肺胞上皮細胞様の形態を持つ肺胞上皮細胞と、基底膜とそれを支持するコラーゲン線維からなる肺胞上皮組織が形成された。この基底膜上では、従来のプラスチック培養基質と比較して肺胞上皮細胞の接着、伸展、遊走が亢進している、ことが明らかになった。2)細胞接着構造や細胞骨格形成の観察から、基底膜上では肺胞上皮細胞の上皮形成が促進しでいることが明らかになった。ゾンなどの酸化性物質の作用形態である過酸化水素を培養系に添加して細胞傷害性漏出酵素と電気抵抗の変化、細胞系形態の変化、細胞接着構造や細胞骨格への影響を観察した。電気抵抗値が細胞傷害をもっとも早く検出することが明らかになった。肺胞上皮細胞は基底膜上では従来のプラスチック上と同じ影響が観察されるものの、細胞傷害の増加と電気抵抗の低下がより遅ていることが観察された。
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